土地・近隣のトラブル

大雨での土砂流入・隣地からの倒木|損害賠償請求と対策方法を気仙沼の司法書士が解説

大雨での土砂流入と隣地からの倒木

大雨のたびに、隣の土地から土砂が流れ込んでくる…我慢するしかないのでしょうか

台風や大雨のあと、庭が土で埋まっていた。側溝が土砂でふさがり、雨水があふれた。裏の斜面が崩れて、家のすぐそばまで土が迫っている。

三陸沿岸は、山が海のすぐ近くまで迫る地形です。斜面を切り開いた宅地や、隣地と数メートルの高低差がある土地が数多くあります。

そのため、大雨のたびに土砂の流入に悩まされている方は、決して少なくありません。こんなふうに感じておられないでしょうか。

相談者
相談者
上の畑から、毎年のように土が流れてきます。もう諦めるしかないのでしょうか…

たしかに、お相手も好きで土砂を流しているわけではありません。「天災なのだから」と言われると、それ以上どうにもできない気持ちになりますよね。

しかし、土砂の流入は、必ずしも「天災だから仕方がない」で片づく問題ではありません。

法律には、流れ込んだ土砂の撤去や、これから先の流入を防ぐ工事を求めるための仕組みが用意されています。

この記事では、大雨による土砂の流入で困ったときに知っておきたい法律の考え方と、実際にとるべき行動を、順を追ってご説明します。

ポイント


・流れ込んだ土砂の撤去は、所有権に基づいて請求できる場合があります。
・これから先の流入を防ぐ予防工事も、請求の対象になり得ます。
・費用を誰が負担するかは、原因が何によるものかで変わります。
・隣地からの倒木も、基本的な考え方は土砂と同じです。
・相手が空き家でも所有者不明でも、裁判所を通じた手段があります。

土砂の流入トラブルを難しくする、3つのハードル

「何とかしたい」と思っても、なかなか一歩を踏み出せない。その背景には、共通する3つのハードルがあります。

(1)誰に、何を、どこまで請求できるのかが分からない

土砂が流れ込んだとき、お相手に求められることは一つではありません。すでに積もった土砂の撤去、これから先の予防工事、壊れた建物の修理費用。それぞれ法律上の根拠が違います。倒木の場合は、さらに別の条文が加わります。

請求する相手も、土地の所有者とは限りません。擁壁や水路の所有者、耕作している方、造成工事をした業者など、状況によって変わります。

(2)「天災なのだから仕方がない」と言われてしまう

土砂の流入では、お相手から「記録的な大雨だったのだから、自分に責任はない」と言われることがよくあります。

たしかに、本当に避けようのない天災であれば、責任を問えない場合もあります。しかし、通常想定される程度の大雨であれば、「不可抗力」とは認められないのが一般的です。

判断の分かれ目は、「きちんと管理していれば防げたのか」という点にあります。

(3)相手が空き家・所有者不明で、話し合いができない

気仙沼市の高齢化率は40%を超えています。相続登記がされないまま放置され、いま誰のものなのか分からない土地も増えています。

隣の山林や畑が、管理されないまま荒れていく。連絡先も分からず、話し合いの糸口すらつかめない。全国的にも、こうした土地は増え続けています。

はじめまして。元登記官・元市役所職員の司法書士が、あなたの力になります

気仙沼岩渕法務事務所の代表、岩渕一徳(いわぶち かずのり)と申します。司法書士・行政書士として、不動産と相続に関するお悩みをトータルにサポートしています。

法務局で「審査する側」を経験した登記官出身

令和2年から令和7年まで、仙台法務局及び盛岡地方法務局に勤務しました。権利の登記・表示登記の調査審査を担当し、「審査する側」の視点を持っています。

土地の地形や境界に関する資料を読み解く作業は、日常的に行ってきた業務です。登記記録から土地の履歴をたどることも得意としています。

また、総務係長として供託業務も担当していました。のちほど触れる仮処分の担保の供託も、勝手を知っている手続きです。

市役所で16年間、地域の困りごとに向き合ってきた

平成16年から令和2年まで、気仙沼市役所に勤務しました。市民課(戸籍・住民票)、税務課(固定資産税・家屋評価担当 8年)、用地課(用地交渉・嘱託登記実務)などを経験しています。

用地課では、土地の境界や工事をめぐる交渉の現場に立ち会ってきました。行政の窓口がどのように動くのかを、内側から知っています。

人権擁護の相談窓口で、隣人トラブルに向き合った経験

法務局では、人権擁護調査救済係長として、差別・虐待・隣人トラブルなど、感情が複雑に絡み合う相談にも向き合ってきました。

土地のトラブルは、法律論だけでは解決しません。長いお付き合いのあるご近所との関係を、どう保ちながら進めるか。そこまで含めてご相談に乗ります。

ポイント


・元登記官だから、土地の履歴や権利関係の調査がスムーズ
・元市役所職員だから、市役所・県・法務局との連携がスムーズ
・人権擁護の相談経験から、ご近所関係に配慮した進め方をご提案
・気仙沼市・南三陸町・陸前高田市・大船渡市・一関市周辺に対応

土砂の流入に、法律はどう答えているのか

ここからは、法律の考え方を5つに分けてご説明します。少し専門的な話になりますが、できるだけ平易な言葉でお伝えします。

(1)流れ込んだ土砂の撤去を求める「所有権に基づく妨害排除請求」

自分の土地に他人の土砂が入り込んでいる状態は、土地の所有権が侵害されている状態です。

このとき土地の所有者は、侵害している人に対して、その状態をやめるよう求めることができます。これを「所有権に基づく妨害排除請求」といいます。

つまり、流れ込んだ土砂を撤去してほしい、と求めることができます。

なお、この権利には、これを直接定めた条文がありません。物を直接支配するという所有権の性質から当然に認められると考えられており、占有しているだけの人にも同じような権利が認められていること(民法198条・199条)とのバランスからも、所有者に認められないはずがない、と説明されています。

ただし、請求するには、お相手の土地から流れ出た土砂であることを、こちらが示さなければなりません。原因がはっきりしない場合は、専門家の意見書などが必要になることもあります。

(2)これから先の被害を防ぐ「所有権に基づく妨害予防請求」

まだ被害が出ていなくても、このままでは被害が及びそうだという場合があります。

そうしたときは、被害が起きないよう必要な措置をとるよう求めることができます。これを「所有権に基づく妨害予防請求」といいます。具体的には、擁壁の設置、水路の整備、斜面の保護工事などです。

ただし、この請求は、認められるためのハードルが高い点に注意が必要です。

法務省の法制審議会の資料でも、「損害が及ぶおそれ」といえるためには、単なる観念的な可能性では足りず、損害が及ぶ蓋然性が必要だと整理されています。

つまり、「いつか崩れるかもしれない」という段階では足りません。ほぼ自然のままの斜面が崩れそうだ、というだけで相手に工事をさせるのは、簡単ではないということです。

危険の内容を客観的に示すには、地形や地質の構造、降雨量との関係などについて、専門家の意見書や調査報告が必要になることも少なくありません。

そのため実務では、いきなり訴訟に進むのではなく、危険の内容を具体的に説明したうえで、費用を分担して対策工事を行うなど、話し合いで着地させる方法が現実的な選択肢になります。

(3)水路や側溝が原因なら、はっきりした条文があります

ここまでの2つは条文のない権利でしたが、原因が水のための工作物にある場合は、明確な規定があります。

民法216条です。貯水・排水・引水のために設けられた工作物が壊れたり詰まったりして、自分の土地に損害が及ぶとき、またはそのおそれがあるときに、修繕・障害の除去・必要な予防工事を求められると定めています。

隣の水路が土でふさがり、水と土があふれてくる。まさに、この条文が想定している場面です。

また、水を通すために他人の設けた工作物を使わせてもらう場合の費用分担については、民法221条2項に定めがあります。

(4)建物や家財が壊れたときは「損害賠償」を請求できます

土砂で建物が壊れた、車が使えなくなった、避難を余儀なくされた。こうした損害については、民法709条の不法行為を根拠に、賠償を求めることになります。

ただし、この請求には二つの条件があります。お相手に落ち度(過失)があったこと、そしてその落ち度が原因で損害が生じたこと(因果関係)です。

一方、原因が人の造った擁壁や水路である場合は、民法717条という強い規定があります。工作物の設置や保存に不備があって他人に損害を与えたときの責任を定めたもので、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは、所有者が過失の有無にかかわらず責任を負います。

注意ポイント


・過失と因果関係は、請求する側(被害を受けた側)が示さなければなりません。
・土砂崩れの原因を明らかにするには、専門的な調査が必要になることもあります。
・裁判になると、解決までに何年もかかる例が報告されています。

(5)ただし「自然に流れてくる水」は止められません

ここで、注意していただきたい規定があります。民法214条は、土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げてはならないと定めています。

高い土地から低い土地へ水が流れるのは、自然の摂理です。低い側は、これを受け入れなければなりません。

もっとも、地面を流れる水に含まれる程度の土であればともかく、土の量が異例といえるほど多く、実際に損害が生じている場合は、話が別です。

なお、屋根などから雨水を隣地に直接注ぐ設備を設けることは、民法218条で禁止されています。

注意ポイント


・「自分の土地だから」といって、勝手に壁や堤で水をせき止めるのは避けてください。
・せき止めた水が他の土地にあふれ、今度はこちらが責任を問われることがあります。
・まずはお相手に対策を求め、それでも解決しないときに次の手段を検討しましょう。

隣の土地からの倒木も、考え方は同じです

隣地から倒れ込んだ木

大雨や台風のあと、土砂と並んで問題になるのが倒木です。斜面の木は、地面がゆるむと根ごと倒れます。

結論から申し上げると、倒木への対応は、ここまでご説明した土砂の場合とほとんど同じです。違うのは、根拠となる条文が一つ増える点だけです。

倒れてきた木の撤去も、妨害排除請求で求められます

自分の土地に他人の木が倒れ込んでいる状態は、土砂が流れ込んでいるのと同じく、所有権が侵害されている状態です。

ですから、木の所有者に対して、その木を取り除くよう求めることができます。所有権に基づく妨害排除請求です。

「台風だったのだから仕方がない」と言われたときの反論も同じです。相当の注意をしていれば倒れるのを防げたといえる場合には、不可抗力とは認められません。

枯れていた、幹に空洞があった、以前から傾いていた。そうした事情があれば、なおさらです。

家や車が壊れたときは、民法717条2項

倒木で建物や車が壊れた場合には、民法717条2項という規定があります。

竹木の栽植または支持に瑕疵があるときは、工作物の場合と同じ責任のルールを当てはめる、という内容です。

つまり、まず占有者が責任を負い、占有者が必要な注意をしていたときは、所有者が過失の有無にかかわらず責任を負うことになります。

「栽植または支持の瑕疵」とは、その木が本来備えているべき安全性を欠いている状態を指します。幹の腐朽や空洞、根の浮き上がり、支柱の不備などがこれにあたります。

ここでも、写真が効きます。倒れた木の切り株の断面や、根の付き方が分かる写真を残しておいてください。腐っていたことが分かれば、大きな材料になります。

倒れる前に。境界を越えた枝は、自分で切れるようになりました

令和5年4月1日から、越境してきた枝の扱いが変わりました。

それまでは、勝手に切ることはできず、所有者に切ってもらうか、裁判で判決を得て強制執行の手続をとるしかありませんでした。

改正後の民法233条3項では、次のいずれかにあたる場合、自分で切り取れるようになりました。

  • 木の所有者に切除するよう催告したのに、相当の期間内に切らないとき
  • 木の所有者が誰か分からない、またはその所在が分からないとき
  • 急迫の事情があるとき

一つ目の「相当の期間」は、業者に頼むなどの時間的な余裕を与える趣旨で、基本的には2週間程度と説明されています。

切り取るために必要な範囲で、隣の土地に入ることもできます(民法209条)。かかった費用は、木の所有者に請求できると考えられています。

なお、境界を越えてきた根については、催告をしなくても切り取ることができます(民法233条4項)。あらかじめ伝えなくてよい、というのが条文の建前です。

ただし、切ってよいのは、境界を越えてご自身の土地に入ってきた部分だけです。地中の根は、どこからが越境部分なのかが目で見えません。

掘り進むうちに境界の向こう側まで切ってしまえば、権利の範囲を超えた行為になります。

また、切った結果として木が弱ったり枯れたりすれば、「そちらのせいだ」と言われ、話がこじれることは十分にあり得ます。実際にどこまで責任を負うのかは、切った範囲や木の状態によって変わり、一概には言えません。

判断に迷う場合は、切ってしまう前にご相談ください。

注意ポイント


・二つ目の「所有者が分からないとき」にあたるには、登記記録や住民票を調べるなど、相当の調査をしたことが必要です。
・切り取った枝は、ご自身のものとして処分することになります。隣の土地に投げ返すと、不法投棄になるおそれがあります。
・木が共有されている場合は、共有者の一人に頼めば足ります(民法233条2項)。

枝も根も、切る前にひと言伝えてください

ここまでは、法律の上でどこまでできるかというお話でした。しかし、実際に動くときは、もう一つ大切なことがあります。

まず、法律の上でも、黙って入ってよいわけではありません。隣の土地に入るときは、あらかじめ、目的・日時・場所・方法を、その土地の所有者と使っている方に通知しなければなりません(民法209条3項)。

住まいそのものに立ち入るには、住んでいる方の承諾が必要です(同条1項ただし書)。使い方も、相手の損害が最も少なくなる方法を選ばなければなりません(同条2項)。

そのうえで、ここからは法律の話ではありません。

ある朝、隣の人が黙って自分の敷地に入り、木を切っていた。そう受け取られた瞬間に、何十年も続いてきた関係が終わってしまうことがあります。切った枝の何倍も大きいものを失うことになりかねません。

ご近所は、引っ越さない限り、これからも続きます。法律が認めているかどうかと、そうするのが得かどうかは、別の問題です。

ポイント


・作業の前に、口頭でよいので「いつ、どこを、どうするか」を伝える
・催告は記録に残しつつ、はじめから内容証明を送らず、まずは手紙を直接お渡しする
・作業の前と後に写真を撮っておく(あとで言った言わないにならないように)
・切った枝はご自身で処分し、相手の土地に置かない
・費用は請求できますが、請求するかどうかは、これからの関係を見て決める

いきなり内容証明郵便が届くと、相手は身構えます。まずは普通の手紙で伝え、それでも動いてもらえないときに、次の手段に進む。この順番のほうが、結果として早く解決することが少なくありません。

ただし、木そのものを伐ることはできません

ここは、必ず押さえてください。

自分で切れるのは、境界を越えてきた枝と根だけです。「倒れそうで危ないから」という理由で、隣の土地に立っている木を勝手に伐ることはできません。

無断で伐れば、器物損壊や損害賠償の問題になります。

危険な木そのものへの対応は、妨害予防請求として伐採を求めるか、このあとご説明する管理不全土地管理制度を使うことになります。

「枝は自分で切れるようになった」という部分だけが広まっていますので、取り違えないようご注意ください。

費用は誰が負担するのか。分かれ目は「不可抗力」かどうか

通常の大雨であれば、原則として原因側の負担

撤去や予防工事の費用を、どちらが負担するのか。これは多くの方が気にされる点です。

一般的な考え方は、次のとおりです。大災害のように、通常必要とされる注意を払っても被害を避けられない場合(不可抗力)や、請求する側にも落ち度がある場合を除き、請求を受けた相手方が負担するのが原則です。

通常の大雨であれば、きちんと注意して対策をしていれば土砂の流出を防げたはずだ、と考えられるためです。

法務省の法制審議会の資料も、同じ方向で整理しています。自然の力によって土砂が崩れた場合であっても、相当の注意をしても崩壊を防げなかったといえなければ「不可抗力」にはあたらず、崩れた土砂を取り除く義務を免れることはないとされています。

「天災だから責任はない」という言い分が、そのまま通るわけではないということです。

分かれ目その2:全額を出してもらえるとは限りません

原因側の負担が原則とはいえ、必ず全額とは限りません。

法制審議会では、この費用の分け方について二つの案が検討されました。原因側の全額負担を原則としつつ、天災の程度、工事によってこちら側が受ける利益、こちら側にも落ち度があればその事情などを考慮して減免を認める案と、原則として双方が等しく分担する案です。

制度そのものは見送られましたが、考え方は参考になります。実際、裁判所が費用の一部をこちら側にも負担させる判決をした例が、法務省の資料でも紹介されています(横浜地判昭和61年2月21日・判例タイムズ638号174頁、静岡地判昭和37年1月12日・下級裁判所民事裁判例集13巻1号1頁)。

割り振り方の考え方も示されています。境界をまたいで工事が必要なときは境界を基準に割合を決める、こちら側の排水によって崖崩れの範囲が広がったときはその差額分をこちらが負担する、といった整理です。

ポイント


・畑の土が流れ込むなど、管理を怠った結果であれば → 原因側の負担が原則
・工事によってこちら側も利益を受ける場合は、一部の負担を求められることがあります
・こちら側の排水などが被害を広げた場合は、その分はこちらの負担になります
・避けようのない天災による場合は、原因側の負担が減免されることがあります

それでも「予防のほうが大切」といえる理由

一方で、実務上の壁もあります。相手の落ち度と因果関係を示す責任は、請求する側にあるからです。

斜面がなぜ崩れたのか、どうすれば防げたのか。これを明らかにするのは簡単ではありません。人災なのか天災なのか分からないまま、請求が認められないこともあります。

また、仮に賠償を勝ち取れたとしても、戻ってくるのはお金だけです。失われた自宅も、そこで穏やかに過ごせたはずの日々も、取り戻すことはできません。

だからこそ、被害が出てから取り戻すことよりも、被害に遭わないための予防のほうがはるかに重要です。

話し合いで解決しないとき、どんな手続きがあるのか

裁判といっても、いきなり訴訟を起こすとは限りません。段階に応じて、いくつかの手続きが用意されています。

まずは「民事調停」という選択肢

調停は、簡易裁判所で、調停委員を交えて話し合う手続きです。訴訟に比べて費用が安く、非公開で進み、申立ての費用も低く抑えられます。

ただし、大切な前提があります。調停は、あくまで話し合いの手続きです。お相手が呼出しに応じなければ、そのまま不成立で終わります。

呼出しに応じない場合の過料の定めはありますが、実際に使われることはほとんどありません。「相手は話し合いには応じるが、条件で折り合わない」という場面に向いた手続きだとお考えください。

逆に、最初から一切応じる気がない相手であれば、調停を飛ばして次の手段を検討したほうが、時間を無駄にしません。

急を要するときは「仮処分」

次の大雨で崩れそうだ、危険な工事が今まさに進んでいる。判決を待っていられない場合には、民事保全法に基づく仮処分という手続きがあります。

工事をやめさせる、必要な措置を先にとらせるといった内容を、裁判所に求めるものです。

注意ポイント


・仮処分では、権利があることと、急いで手を打つ必要があること(保全の必要性)を疎明しなければなりません(民事保全法13条)。
・原則として、担保を立てる必要があります(同法14条)。担保は、法務局への供託によって行うのが一般的です。
・判断は早いぶん、準備は短期間に集中します。早めのご相談が欠かせません。

判決が出ても、相手が動かないときは

土砂を撤去せよという判決が出ても、お相手が従わないことがあります。

その場合は、民事執行法171条の代替執行という方法があります。第三者に工事をさせ、その費用をお相手に負担させる手続きです。

知っておきたい、近年の法改正

新しくできた「管理不全土地管理制度」

隣の土地が誰のものか分かっていても、その方が管理をせず、荒れるに任せている。こうした「管理不全土地」への対応として、令和5年4月1日から新しい制度が始まりました。

管理不全土地管理命令(民法264条の9)といいます。裁判所が管理人を選び、その管理人に土地を管理させる制度です。

ポイント


・所有者による管理が不適当で、他人の権利や法律上保護される利益が侵害されている(またはそのおそれがある)場合が対象
・利害関係人が、裁判所に請求します
・建物についても、管理不全建物管理命令(民法264条の14)があります
・管理人の費用や報酬は、原則として土地の所有者の負担です

費用は原則として土地の所有者の負担ですが、実務上は、申し立てた側がいったん予納金を納めることになります。その後、所有者に返還を求めていく流れです。申立てには、ある程度まとまった資金の準備が必要になります。

所有者が分からないときの「所有者不明土地管理制度」

登記記録をたどっても所有者が分からない。分かっても所在がつかめない。そうした土地には、所有者不明土地管理命令(民法264条の2)という制度があります。

同じく令和5年4月1日に始まった制度で、裁判所が選んだ管理人が土地を管理します。

行政の力を借りるという選択肢もあります

当事者どうしの話し合いだけが、解決の道ではありません。行政の制度を活用できる場合があります。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されると、隣地の斜面をいじれなくなります

崩落のおそれがある場所については、急傾斜地法に基づく急傾斜地崩壊危険区域という制度があります。

指定されると、その区域内で切土・盛土・立木の伐採・水を放流したり停滞させたりする行為などに、知事の許可が必要になります(急傾斜地法7条)。

つまり、隣の土地の所有者が、勝手に斜面をいじれなくなります。これが最大の実益です。

注意ポイント


・住民が「指定してほしい」と申請する制度はありません。要望や情報の提供はできますが、決めるのは県です。
・傾斜30度以上・高さ5メートル以上・被害を受けるおそれのある人家が5戸以上、といった要件があります。1軒だけの被害では対象になりにくいのが実情です。
・指定されても、必ず県が対策工事をしてくれるわけではありません。工事の際に受益者負担金が生じることもあります。
・制限は、隣地だけでなくご自身の土地にもかかります。

まずは県の砂防を担当する窓口に、現地の状況をご相談ください。

盛土が原因なら「盛土規制法」

隣の土地に土が持ち込まれ、それが崩れてきた。こうしたケースでは、盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法)が関係します。

熱海市の土石流災害を受けて制定され、令和5年5月26日に施行された法律です。宮城県では、令和7年5月23日に県内全域が規制区域に指定されました。

規制区域内で一定規模以上の盛土などを行うには、許可が必要です。危険な盛土が疑われる場合は、県の窓口に情報を提供できます。

被害を受けたあとの支援制度

実際に被害が出てしまったときは、次のような制度も確認してください。

  • 罹災証明書(市役所で申請します。各種支援の入口になります)
  • 宅地内に堆積した土砂の排除に関する市の事業
  • 市の災害見舞金など、独自の支援制度
  • ご加入の火災保険の水災補償、家財の補償

なお、被災者生活再建支援法という制度もありますが、こちらは市町村全体で住宅の全壊が10世帯以上に達するなど、災害の規模が一定以上であることが条件です。1軒に土砂が流れ込んだ、という場面では使えません。

使える制度は、災害の規模や地域によって変わります。まずは気仙沼市の窓口にご確認ください。

山林の太陽光発電から土砂が流れてきたときの対応

山林に設置された太陽光パネルと土砂の流出

山林を切り開いて設置された太陽光発電設備から土砂が流れ出す、というトラブルが各地で起きています。

「パネルが並んでから、大雨のたびに赤土まじりの水が流れてくるようになった」。全国各地で、同じ声が上がっています。

ここでは、すでに設置されている設備から被害が出ているときに、何をすればよいかを順にご説明します。

ただし、はじめに正直なところをお伝えしておきます。

注意ポイント


・土砂崩れは、雨量・地形・地質など複数の要因が重なって起こります。太陽光発電設備だけが原因だと示すのは、簡単ではありません。
・原因と結果のつながりを示す責任は、被害を受けた側にあります。専門家による調査や鑑定が必要になり、費用も時間もかかります。
・そのため実際には、いきなり訴訟に進むより、記録を積み上げたうえで事業者と協議し、行政にも動いてもらうという進め方が現実的です。

以下は、その協議を有利に進めるための材料の集め方だとお考えください。

1 「設置の前と後」を比べられる材料を集める

この種のトラブルで最も強い材料は、設置の前は何ともなかった、という事実です。

古い写真、周辺の方の記憶、市販の地図、過去の航空写真などを集めておいてください。地形が変わる前と後を並べられると、話の説得力がまるで違います。

そのうえで、被害のたびに日付・降水量・被害の写真を残していきます。

事業者の連絡先が分からないときは、現地のフェンスなどに掲げられている標識を確認してください。FIT法の施行規則により、外部から見えやすい場所に連絡先を明示することが義務づけられています。

2 「豪雨だったから」は、そのままでは通りません

事業者から「記録的な大雨のせいだ」と言われることがあります。

しかし、盛土規制法は、盛土などが行われた土地について、その所有者・管理者・占有者は、災害が生じないよう常時安全な状態に維持するよう努めなければならないと定めています(同法22条、41条)。国土交通省も、この法改正によって土地の所有者等が安全な状態に維持する責務を負うことが明確になった、と説明しています。

太陽光の事業者は、多くの場合その土地の占有者にあたりますので、この規定の対象になります。

環境省のガイドラインも、斜面に設置され排水対策が十分でない施設では、雨が降るたびに斜面の下の隣接地や河川へ濁った水や土砂が流れ込む被害が起こり得ると指摘しています。

同じガイドラインは、伐採された樹木の根による斜面を安定させる効果は、根が枯れて腐っていくにつれて低下していくとも指摘しています。伐採の直後は何ともなくても、数年たってから崩れ出すことがあるのは、このためです。

問題にされるのは、自然現象そのものではなく、事前に防げたかどうかです。排水設備の設計や施工に不備があれば、不可抗力とは認められにくくなります。

3 請求できる相手は、一人とは限りません

次の三者が考えられます。

  • 発電事業者(開発を行い、設備を所有・管理している者)
  • 土地の所有者(山林を貸しているだけの地主も含みます)
  • 造成工事や設置工事を行った施工業者

土地の所有者がどこまで関わるかは、契約の内容によって変わります。まずは契約書を確認することが出発点になります。

また、パネルや架台、造成された斜面、排水設備は、いずれも「土地の工作物」にあたり得ます。設置や保存に不備があって損害が生じたときは、民法717条の責任が問題になります。この規定では、占有者が必要な注意をしていたときは、所有者が過失の有無にかかわらず責任を負います。

4 「県の許可を得ている」と言われても、話は終わりません

事業者から「きちんと許可を受けている」と言われることがあります。実際、大半の設備は許可を受けて設置されています。

しかし、許可を受けていることと、隣の土地に被害を与えてよいこととは、別の話です。

行政の許可は、公法上の基準に適合しているという判断にすぎません。現に土砂が流れ込んで損害が生じていれば、民法709条や717条の責任は、それとは別に問題になります。

とくに民法717条は、工作物の「設置または保存に瑕疵がある」ことを要件としています。排水設備が計画どおりに機能していないと確かめられれば、瑕疵を示す材料になります。

過失の立証が要らないぶん、負担は軽くなります。ただし、工作物に瑕疵があったこと、そしてその瑕疵によって被害が生じたことは、こちら側で示す必要があります。不備の程度と被害とのつながりは、結局のところ専門家の判断を要する場面が多くなります。

なお、無許可であったり、許可の条件に違反していたりする疑いがある場合は、県の窓口に相談する道もあります。ただし、多くの設備は許可を受けて設置されていますので、この道が使えるとは限りません。

山林を貸している地主の方へ

注意ポイント


・造成された斜面も「土地の工作物」にあたると判断されることがあります。貸しているだけの地主でも、責任を問われる可能性は残ります。
・契約書に、防災対策の分担、事故が起きたときの責任、契約終了時の撤去について書かれているかを確認してください。
・事業者が撤退したり破綻したりした場合、パネルが放置されるおそれもあります。

山林を貸しておられる方、これから貸そうか迷っておられる方は、契約書の確認だけでもご相談ください。あとから直すより、貸す前に整えるほうが、はるかに簡単です。

土砂や倒木の被害に遭ったら、まずやっておきたい5つのこと

裁判になるかどうかにかかわらず、初期の記録がその後を左右します。次の5点を意識してください。

step
1
写真と動画を、日付が分かる形で残す

被害の全体が分かる写真と、土砂の厚みが分かる写真の両方を撮ります。メジャーを当てて撮ると、量が伝わります。

step
2
いつ、どのくらいの雨が降ったのかを記録する

気象庁のホームページで、その日の降水量を確認できます。記録的な大雨だったのか、よくある大雨だったのか。この違いが、不可抗力かどうかの判断に直結します。

step
3
過去の流入も書き出しておく

「令和○年○月にも同じ場所から流入があった」という記録は、これから先も繰り返されるおそれを示す材料になります。

step
4
相手の土地の登記記録を取得する

名義人は誰か、地目は何か、いつ、どのような原因で名義が入ったかを確認します。

ただし、登記記録から分かるのはそこまでです。名義が何十年も前のものであっても、その方が健在であれば何の問題もありません。所有者が亡くなっているかどうかは、住民票や戸籍で確かめることになります。

step
5
撤去にかかった費用の領収書を保管する

ご自身で業者に頼んで撤去した費用は、あとから請求できる可能性があります。見積書と領収書は必ず残してください。

注意ポイント


・感情的なやり取りは、解決を遠ざけます。まずは事実の記録に徹してください。
・相手の土地に無断で立ち入って工事をすると、逆に責任を問われることがあります。
・「そのうち何とかなる」と放置すると、次の大雨で被害が広がります。

気仙沼岩渕法務事務所にできること・できないこと

司法書士には、法律で定められた業務の範囲があります。できることとできないことを、はじめにはっきりお伝えします。

土砂の流入では、お相手の土地の名義が何十年も前のままだった、ということが少なくありません。誰に請求すればよいのかを確かめる作業が、実は最初の関門になります。ここは、当事務所が最も得意とする分野です。

当事務所がお手伝いできること

  • 相手の土地の登記記録の調査(名義人は誰か、いつ、どのような原因で名義が入ったか)
  • 戸籍をたどった相続人の調査(お相手が亡くなっている場合)
  • 内容証明郵便など、お相手に申入れをする書面の作成
  • 民事調停の申立書の作成
  • 管理不全土地管理命令・所有者不明土地管理命令の申立書類の作成
  • 裁判所に提出する書類の作成
  • 市役所・県・法務局の窓口との調整、必要な資料の取り寄せ

ポイント


登記記録の調査と相続人の調査は、当事務所が最も得意とする分野です。
元登記官として、権利の登記・表示登記の両方を審査してきた経験があります。
「相手が誰なのか分からない」という段階から、ご相談いただけます。

弁護士・土地家屋調査士におつなぎするケース

  • お相手との交渉や、裁判の代理 → 弁護士
  • 境界がどこかを確定させる必要がある場合 → 土地家屋調査士
  • 擁壁や斜面の安全性を技術的に判断する必要がある場合 → 専門の調査会社

当事務所での対応が難しいと判断した場合は、連携している専門家をご紹介します。「まず誰に相談すべきか」の交通整理だけでも、お役に立てます。

料金について

初回のご相談は無料です。費用が必要になる場合は、着手の前に必ずお見積りをお出しします。

  • 初回相談:無料(お見積りも無料です)
  • 登記記録の調査、相続人の調査:内容に応じてお見積り
  • 内容証明郵便の作成:内容に応じてお見積り
  • 裁判所提出書類の作成:内容に応じてお見積り

土日・夜間のご相談も、ご予約をいただければ対応いたします。

早めのご相談ほど、選べる手段が増えます

土砂の流入は、放っておいて良くなることはありません。むしろ、時間の経過とともに難しくなっていきます。

  • 次の大雨で、被害がさらに広がるおそれがあります
  • 時間が経つほど、崩れた原因の解明が難しくなります
  • お相手に相続が発生すると、話し合う相手の人数が増えていきます
  • 損害賠償の請求権には時効があります(損害と加害者を知ったときから3年など)
  • 現在、代表者1名で対応しているため、お受けできる件数には限りがあります

ご相談の際にご用意いただきたいもの

次のものがあると、初回のご相談でより具体的なお話ができます。すべてそろっていなくても構いません。

  • 被害の写真(スマートフォンの画面のままで結構です)
  • ご自身の土地の権利証、または固定資産税の納税通知書
  • 住宅地図や現地の見取り図(手書きでも十分です)
  • お相手とのやり取りの記録(手紙、メモなど)
  • これまでの流入の経過をまとめたメモ

よくあるご質問

隣の畑から土が流れてきます。撤去を求めることはできますか。

流れ込んだ土砂が現在も残っている場合、所有権に基づく妨害排除請求として、農地の所有者に撤去を求められる可能性があります。過去にも繰り返し流入しているのであれば、防護擁壁の設置や水路の整備といった予防措置を求めることも考えられます。

相手から「天災だから責任はない」と言われました。

本当に不可抗力といえるかどうかが分かれ目です。未曽有の豪雨でない限り、通常の大雨であれば、きちんと管理していれば防げたと考えられ、不可抗力とは認められないのが一般的です。

まだ被害は出ていませんが、隣で危なそうな工事が始まりました。止められますか。

妨害予防請求という方法がありますが、認められるハードルは高いのが実情です。単なる不安では足りず、実際に損害が及ぶ蓋然性があることを示す必要があります。地形や地質について専門家の意見書が必要になることもあります。まずは危険の内容を具体的に説明し、費用を分担して対策をとるといった協議から入るのが現実的です。

隣の土地は空き家で、持ち主と連絡が取れません。

まず登記記録から所有者を調べ、相続が発生していれば戸籍で相続人をたどります。それでも所在が分からない場合は、所有者不明土地管理命令の申立てという方法があります。所有者は分かっていても管理をしないという場合は、管理不全土地管理命令を使えることがあります。

土砂を自分で撤去してしまいました。費用は請求できますか。

状況によっては請求できる可能性があります。見積書・領収書・撤去前後の写真を必ず保管してください。ただし、撤去の前にお相手へ通知しておいたほうが、後の話し合いは進めやすくなります。

流れてくるのを防ぐために、境界に壁を作ってもよいですか。

おすすめできません。自然に流れてくる水を妨げてはならないという規定があり(民法214条)、勝手にせき止めると、こちらが違法と判断されるおそれがあります。よほどの緊急時を除き、まずはお相手に対策を求めてください。

台風で隣の木が倒れてきました。撤去は誰がするのですか。

木の所有者に対して、取り除くよう求めることができます。「台風だから」という理由だけで責任がなくなるわけではありません。枯れていた、傾いていたなど、事前に手を打てた事情があれば、なおさらです。建物や車が壊れた場合は、民法717条2項に基づく賠償も検討します。

隣の枝が越境しています。切ってしまってよいですか。

令和5年4月1日から、所有者に切除を催告しても相当の期間内に切らないとき、所有者や所在が分からないとき、急迫の事情があるときは、ご自身で切り取れるようになりました。ただし、切れるのは越境した枝と根だけです。木そのものを伐ることはできませんので、ご注意ください。

裏山にソーラーパネルが設置されてから、土砂が流れてくるようになりました。

まず申し上げておくと、簡単な話ではありません。土砂崩れは雨量・地形・地質など複数の要因が重なって起こるため、パネルの設置が原因だと示すには専門家の調査が必要になり、費用も時間もかかります。そのうえで、できることはあります。「県の許可を受けている」と言われても、それで終わりではありません。許可は公法上の基準に適合しているという判断にすぎず、現に被害が生じていれば、民法717条の工作物責任などが別に問題になります。まずは、設置の前は問題がなかったことを示す材料(古い写真や航空写真など)と、被害のたびの記録を残してください。そのうえで、事業者との協議や県への相談を進めることになります。

山林を太陽光の事業者に貸しています。私も責任を問われますか。

可能性は残ります。造成された斜面も「土地の工作物」にあたると判断されることがあり、その場合、所有者は過失がなくても責任を負い得ます。契約書に防災対策の分担や撤去の定めがあるかを、一度ご確認ください。

気仙沼市外でも対応してもらえますか。

南三陸町・陸前高田市・大船渡市・一関市周辺にも対応しています。まずはお問い合わせください。

相談したことが、ご近所に知られませんか。

司法書士には守秘義務があります。ご相談の内容が外部に漏れることはありません。安心してお話しください。

>>相談時間や相談方法など、その他の「一般的なよくあるご質問」については、こちらをご覧ください。

【参考】この記事で触れた法令・裁判例

一般の方は読み飛ばしていただいて構いません。より詳しく確認されたい方のために、根拠をまとめておきます。

  • 所有権に基づく妨害排除請求権・妨害予防請求権:これを直接定めた明文の規定はなく、所有権の性質、占有訴権(民法198条・199条・200条)との均衡、民法202条1項が「本権の訴え」を予定していることから、解釈上当然に認められるとされています。
  • 予防工事費用の分担:費用の一部を土地所有者に負担させる判決を一部認容とした裁判例として、横浜地判昭和61年2月21日・判例タイムズ638号174頁、静岡地判昭和37年1月12日・下級裁判所民事裁判例集13巻1号1頁(いずれも法制審議会民法・不動産登記法部会資料39に引用)
  • 正当防衛及び緊急避難:民法720条(急迫の事情があるときに一定の措置が正当化される場合があります)
  • 工作物の破壊・閉塞による損害と修繕・除去・予防工事の請求:民法216条
  • 通水用工作物の使用とその費用の分担:民法221条
  • 自然水流に対する妨害の禁止:民法214条
  • 雨水を直接に注ぐ工作物の設置禁止:民法218条
  • 不法行為に基づく損害賠償:民法709条、消滅時効:民法724条
  • 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任:民法717条
  • 竹木の枝の切除及び根の切取り:民法233条(令和5年4月1日施行)。所有者への催告後、相当の期間内に切除されないとき、所有者又はその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときは自ら切り取ることができます(3項)。根は催告を要しません(4項)。枝と根で扱いが異なるのは、根については植え替えの機会を与える必要が乏しいと解されているためです。「相当の期間」は基本的に2週間程度と説明されています。切取り費用は竹木の所有者に請求できると考えられています(民法703条、709条)。切り取った根の所有権は切り取った者に、切り取った枝の所有権は越境された土地の所有者に帰属すると解されています。
  • 枝の切取りのための隣地の使用:民法209条。使用の日時・場所・方法は隣地所有者等のために損害が最も少ないものを選ぶ必要があり(2項)、あらかじめ目的・日時・場所・方法を通知しなければなりません(3項)。住家に立ち入るには居住者の承諾が必要です(1項ただし書)。
  • 竹木の栽植又は支持の瑕疵に基づく責任:民法717条2項(同条1項を準用)
  • 所有者不明土地管理命令:民法264条の2以下
  • 管理不全土地管理命令:民法264条の9以下、管理不全建物管理命令:民法264条の14(いずれも令和5年4月1日施行)
  • 仮処分:民事保全法23条、疎明は同法13条、担保は同法14条
  • 代替執行:民事執行法171条
  • 民事調停:民事調停法。申立ては「申立ての趣旨及び紛争の要点」を明らかにして行います(同法4条の2)。相手方が応じない場合は不成立となります。
  • 急傾斜地崩壊危険区域内における行為制限:急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律7条(切土・盛土・立竹木の伐採・水の放流又は停滞等に知事の許可が必要)
  • 盛土等の規制:宅地造成及び特定盛土等規制法(令和5年5月26日施行。宮城県は令和7年5月23日に県内全域を規制区域に指定)。盛土等が行われた土地の所有者・管理者・占有者は、災害が生じないよう常時安全な状態に維持するよう努めなければなりません(同法22条、41条)。ただし努力義務であり、この規定から直ちに民事上の賠償義務が生じるものではなく、損害賠償の可否は民法709条・717条によって判断されます。
  • 土砂災害警戒区域:土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律
  • 被災者生活再建支援法。適用には、市町村で住宅全壊10世帯以上などの規模要件があります。
  • 林地開発許可:森林法10条の2(令和5年4月1日から、太陽光発電設備の設置を目的とする開発行為は0.5ヘクタール超が許可の対象)
  • 周辺住民への説明会・事前周知措置:再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法(令和6年4月1日施行。同日以後に認定を受ける事業が対象)
  • 宮城県再生可能エネルギー地域共生促進税条例(令和6年4月1日施行。0.5ヘクタール超の森林開発区域に設置された再エネ発電設備の所有者に課税し、地域脱炭素化促進事業等の認定を受けた事業は非課税)
  • 環境省「太陽光発電の環境配慮ガイドライン」(令和2年3月)。斜面に設置され適切な排水対策が講じられていない施設では、降雨の度に斜面下の隣接地や河川等へ濁水・土砂が流れ込む被害が発生することがあるとされています(2ページ)。伐採された樹木の根による斜面安定化の効果は、根が枯死し腐っていくことに伴い低下していくとされています(15ページ)。施設設置後は、外部から見えやすい場所に連絡先を明示する必要があります(FIT法施行規則に基づく標識の掲示義務。37ページ)。
  • 行政の許可を受けていることは、公法上の基準への適合を示すにとどまり、民法上の不法行為責任(709条)や土地工作物責任(717条)を当然に免れさせるものではありません。
  • 法制審議会民法・不動産登記法部会 部会資料39「管理不全土地への対応」。同資料では、自然的要因による土砂の崩壊であっても、相当の注意をしても防止し得なかったといえなければ「不可抗力」にはあたらないこと、「損害が及ぶおそれ」には蓋然性が必要であること、費用負担の考え方などが整理されています。なお、同資料で検討された「管理措置請求制度」は、令和3年の改正には採用されませんでした。

まずは無料相談へ。ひとりで抱え込まないでください

土砂の流入は、ご近所との関係が絡むぶん、相談しづらい問題です。「大ごとにしたくない」というお気持ちも、よく分かります。

だからこそ、早い段階で第三者に状況を整理させてください。裁判をするかどうかは、そのあとに考えれば十分です。

まずは、次の大雨が来る前に。お気軽にご連絡ください。

ポイント


「これは相談していい話なのかな」という段階で構いません。
状況をお伺いしたうえで、必要な手続きと進め方を丁寧にご案内します。
初回のご相談・お見積りは無料です。

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本記事は投稿時点における法令・税制に基づいて作成しています。税法や不動産に関する法律は頻繁に改正されるため、記事の内容が現時点の情報と異なる場合があります。実際の手続き・申告・判断に際しては、必ず最新情報を国税庁・法務局・各市区町村の窓口でご確認いただくか、税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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司法書士 岩渕一徳

-土地・近隣のトラブル