コラム 空家・相続不動産

空き家を放置するとどうなる?固定資産税6倍・損害賠償・相続の3大リスクを気仙沼の司法書士が解説

全国に900万戸。あなたの実家は「空家」になっていませんか?

2023年10月1日現在で行われた住宅・土地統計調査(総務省)で、全国の空家数が900万2千戸に達し、空家率は13.8%と、いずれも過去最高を記録しました。

これは日本の住宅の約7軒に1軒が空家という計算です。

「親が亡くなって実家が空き家になったが、どうすればいいか分からない」「遠方に住んでいて管理できない」「解体しようにも費用が高くて踏み出せない」──そんなお悩みをお持ちの方は、年々増えています。

この記事では、政府の最新統計をもとに空家問題の現状を整理しながら、空家が放置されてしまう構造的な理由と、放置することで生じる具体的なリスクをお伝えします。

住宅・土地統計調査が示す「空家大国」日本の現実

まず、政府の最新データを確認しましょう。

(1)空家数・空家率の推移 ─ 過去最高の900万2千戸・13.8%

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)」2023年10月1日現在・令和6年9月25日公表

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)」2023年10月1日現在・令和6年9月25日公表

令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在)主な数値

・総住宅数      :6,504万7千戸(前回2018年調査比 263万9千戸増・4.2%増)
・空家総数      :900万2千戸(前回比 51万3千戸増、過去最多を更新)
・空家率(空家の割合):13.8%(前回13.6%から上昇、過去最高)
・計算すると     :日本の住宅の約7軒に1軒が空家

1988年(昭和63年)の空家率は9.4%でした。それが2023年には13.8%と、約35年間で4.4ポイント上昇しています。また、1993年(447万6千戸)から2023年(900万2千戸)の30年間で、空家数は約2倍になっています。

(2)空家の種別 ─ 問題の中心は「放置空家」385万6千戸

空家といっても、国の調査では種別が分類されています。中でも特に深刻なのが「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空家」(放置空家)です。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)」2023年10月1日現在・令和6年9月25日公表

空家の種別と戸数(2023年10月1日現在・表2-2「総数」行より)

・賃貸用の空き家(貸したいが入居者がいない):443万6千戸(空家総数の49.3%)
・売却用の空き家(売り出し中)       :32万6千戸(同 3.6%)
・二次的住宅(別荘・週末住宅など)     :38万4千戸(同 4.3%)
・賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家  :385万6千戸(同42.8%)← 問題の中心

「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家(放置空家)」は空家全体の42.8%を占めており、老朽化・倒壊・不審者侵入・衛生悪化などのトラブルを引き起こす原因になっています。2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法では、この放置空家への対策が大幅に強化されました。

(3)気仙沼市・石巻市では今後さらに深刻化する理由

全国的に空家が増える背景には「高齢化」と「人口減少」があります。気仙沼市・石巻市では、この2つが全国平均を大きく上回るペースで進んでいます。

気仙沼市・石巻市の高齢化率(令和7年3月31日現在)

・気仙沼市の高齢化率 :41.3%(宮城県内第6位)
・石巻市の高齢化率  :35.4%(宮城県内第20位)
・気仙沼・本吉圏域  :41.2%(宮城県内で栗原圏域に次いで第2位)
・宮城県全体の高齢化率:29.7%
・全国平均の高齢化率 :29.3%(令和6年10月1日現在・参考値)
・<気仙沼市の内訳> 総人口:55,716人 / 65歳以上:23,026人(高齢化率41.3%)
・75歳以上(後期高齢者):13,657人(総人口の24.5%・4人に1人)

出典:宮城県「高齢者人口調査」令和7年3月31日現在・令和7年7月2日公表

当事務所のある気仙沼市では、「高齢のご両親が亡くなったあと、相続人が仙台や東京に住んでいて実家が空家になってしまった」というご相談が急増しています。

これは気仙沼市だけの話ではありません。全国のデータをみると、世帯が所有する空き家のうち61.6%が「相続・贈与」で取得されたものです。空家問題は、相続と深く結びついた問題でもあります。

空家が放置されてしまう「三重苦」の構造

困りごと・悩む人のイラスト

なぜ、空家はこれほどまでに増え続けるのでしょうか。その背景には、「売れない・貸せない・壊せない」という三重の壁があります。

(1)売れない ─ 老朽化した建物と複雑な権利関係が買い手を遠ざける

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅の構造等に関する集計(確報集計)」2023年10月1日現在・令和7年1月29日公表

上の表のとおり、全国の世帯所有空き家のうち、1980年(昭和55年)以前に建築されたものが全体の約67%を占めています(1970年以前44.6% + 1971〜1980年22.8% = 67.4%)。旧耐震基準(昭和56年5月31日以前に建築確認を受けた物件)が多く含まれており、住宅ローンの審査が通りにくく、担保評価も低くなる傾向があります。

また、空家の61.6%は相続・贈与で取得されたものです(表6の「相続・贈与」欄:486千戸÷789千戸)。相続登記が未了のまま放置された物件は、売却に必要な権利関係の整理に時間がかかります。なお2024年4月からは相続登記の申請が義務化されています。(詳しくは→ 相続登記の義務化についてをご覧ください)

さらに、気仙沼・石巻のような人口減少地域では、そもそも買い手を見つけること自体が難しい物件が増えています。

(2)貸せない ─ 老朽化と需要不足の壁

古い建物を賃貸に出そうとしても、旧耐震基準の物件は耐震改修が必要なケースがあり、改修費用の回収見込みが立たないことがあります。

また、人口が減り続ける地域では賃貸需要そのものが細っており、家賃相場も低い。賃貸に出せたとしても、管理コストや将来の解体費用を考えると、採算が取れないケースが大半です。

(3)壊せない ─ 解体費用と固定資産税の「二重の罠」

「いっそ建物を解体して更地にしよう」と考えた方も多いと思います。しかし、解体にも大きな壁があります。

まず費用の問題があります。木造一軒家の解体には一般的に相応の費用がかかり、価値の低い相続物件では費用対効果が合わないケースがあります。

固定資産税の「住宅用地特例」に注意

土地の上に住宅が建っている場合、固定資産税には「住宅用地特例」が適用されています。
 ・小規模住宅用地(200㎡以下の部分):課税標準が1/6に減額
 ・一般住宅用地(200㎡を超える部分):課税標準が1/3に減額

建物を解体して「更地」にすると、この特例が外れ、課税標準が本来の額に戻ります。
小規模住宅用地(200㎡以下)の場合、固定資産税の課税標準が最大6倍になります。
「解体するほど税負担が増える」という逆説的な構造が、空家の放置を招いています。

このように「売れない・貸せない・壊せない」の三重苦が重なり、所有者も空家をどうすることもできないまま、問題が放置・深刻化するという悪循環に陥っています。

空家を放置し続けると、どんなリスクが生まれるのか

注意事項のイラスト

「とりあえず今は手をつけられない」と感じている方も多いと思います。しかし、空家は放置すればするほどリスクが大きくなります。

(1)特定空家・管理不全空家に認定されると、固定資産税の負担が増大する

2023年12月施行の改正空家等対策特別措置法では、空家への対応が大幅に強化されました。

法改正で新設された「管理不全空家」と固定資産税の関係

■ 特定空家等(倒壊危険・衛生上有害・景観を著しく損なう等)
  市区町村長から「勧告」を受けた場合 → 住宅用地特例の適用対象から除外

■ 管理不全空家等(放置すれば特定空家に該当するおそれがある)
  改正法施行後、市区町村長から「勧告」を受けた場合 → 同様に住宅用地特例の適用対象から除外

★ 小規模住宅用地(200㎡以下)の場合、特例が外れると課税標準が最大6倍になります。

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について 第2部 補助制度・税制等」令和5年6月14日公布

建物の劣化が進み、近隣への悪影響が出てきた段階で行政から勧告を受けることがあります。その時点ではすでに多額の税負担が生じているケースも少なくありません。早めの対応が重要です。

(2)老朽化が進むほど、解体・修繕のコストが膨らむ

誰も住んでいない建物は、換気や修繕がされないため老朽化が急速に進みます。雨漏りや腐食、シロアリ被害が広がれば、解体費用はさらに高くなります。

さらに重大なのが「損害賠償責任」のリスクです。建物が倒壊して隣家や通行人に被害を与えた場合、民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)により、空家の所有者が損害賠償責任を負う可能性があります。損害の規模によっては、多額の賠償金が発生するケースもあります。

放置期間が長くなるほど費用とリスクは膨らみます。「いつかやろう」という先送りが、最終的な負担を大きくします。

(3)相続を重ねるほど、権利関係の整理が複雑になる

空家の所有者が亡くなっても相続登記をしないでいると、次の相続が発生したときに権利を持つ相続人の数が増えていきます。相続人が増えるほど、全員からの同意を得るのが難しくなり、売却も解体もできない「動かせない不動産」になっていきます。

全国の世帯所有空き家の61.6%が相続・贈与で取得されたものであることからも、空家問題と相続が密接に結びついていることが分かります。2024年4月からは相続登記の申請が義務化されており(正当な理由なく放置した場合は10万円以下の過料の可能性)、権利関係の早期整理がより重要になっています。

この記事のまとめ

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この記事のポイントまとめ

・① 全国の空家は900万2千戸・空家率13.8%と、いずれも過去最高(2023年10月1日現在)
・② 放置空家は385万6千戸・空家全体の42.8%を占めている
・③ 気仙沼市の高齢化率は41.3%と全国平均の29.3%を12ポイント超上回る(令和7年3月31日現在)
・④ 世帯所有空き家の約67%が1980年以前建築・61.6%が相続・贈与で取得されたもの
・⑤ 「売れない・貸せない・壊せない」の三重苦が空家の固定化を招いている
・⑥ 放置すると固定資産税の増大・老朽化コスト膨張・損害賠償リスクが重なる
・⑦ 早めの相談と対応が、問題を小さく抑える最善の方法です

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 本記事の情報について

本記事は投稿時点における法令・税制に基づいて作成しています。税法や不動産に関する法律は頻繁に改正されるため、記事の内容が現時点の情報と異なる場合があります。実際の手続き・申告・判断に際しては、必ず最新情報を国税庁・法務局・各市区町村の窓口でご確認いただくか、税理士・司法書士などの専門家にご相談ください。

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司法書士 岩渕一徳

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